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2018年5月1日発行 月刊税理士事務所・CHANNEL「テレワーク」

      2018/10/22

残業時間60%ダウン、生産性113%アップに成功

既存のサービスを利用すれば月額3~4万円でIT環境が整う


(株)石井事務機センターは、1911(明治44)年に文具店として創業し、その後、事務用品・オフィス家具・OA機器の販売を手がけてきた会社です。営業職、保守サポート職、事務職などの方が働いています。同社の石井 聖博社長は「2年前に中小企業向けにワークスタイルの改善提案と、それに役立つソフトウェアやツールの販売という新規事業をスタートしました。お客様にテレワークを勧める前に、まずは自分たちからということで、制度化しました」と話します。

当初は子育て中の女性社員のみが対象でしたが、子どもが急な病気になっても自宅で仕事ができるなど、導入から1カ月もすると、業務効率がかなり上がることが明らかになったため、その後、徐々に対象を広げて、現在は29名の全社員に制度の利用を義務づけているそうです。「任意の時間帯に社外勤務を許可しており、中にはほとんど会社に来ない社員もいます」とのこと。

また、導入にあたっては、大きく三つの課題があったといいます。一つ目は労務管理。同社ではクラウド型の勤怠管理システムを導入し、スマートフォンから、始業、休憩、終業を報告してクラウド上で一括管理できる方法を採用しました。

二つ目はコミュニケーションの質の維持。電話やメール、チャットなどのやりとりだけでは不十分だと考え、同社はウェブ会議システムを導入して、会社のディスプレイとテレワーカーを常時接続することに決めました。「お互いの顔を見ながら会話できるのはもちろん、資料を画面に映しながら相談できて便利です」と石井社長は話します。

最後の三つ目は、情報漏洩対策です。社内データは全て共有サーバーで管理し、外部からリモートアクセスできるようにするなどして、セキュリティレベルを高めています。

「大企業であれば、このようなIT環境は、膨大な予算と時間をかけて一から自社構築することが多いようですが、弊社は既存のサービスを利用したため初期費用はほとんどかからず、月額3~4万円程度で運用できています。中小企業のほうがテレワーク制度は導入しやすいのではないでしょうか」と石井社長は話します。

1時間当たりの生産性を数値化して社員の意識を改革

テレワーク導入後は、会社全体で残業時間が60%減り生産性が113%向上したそうです。「いまでこそ成功したと言えますが、導入直後は『なぜ在宅勤務者と給料が同じなのか』などと不満の声も少なくありませんでした。社員に意識を変えてもらうために、人事評価では、数値化した『1時間あたりの生産性』をもっとも重視することにしました」と言います。

生産性の数値化の手順は次のとおり。まず「残業時間の削減」「社内ルールの遵守」など、項目ごとに5段階で勤務評価をします。次にその合計点数を勤務時間で割ります。例えば、評価点数が80点で並んだAさんとBさんがいたとして、Aさんは月160時間、残業の多いBさんは
月200時間勤務していたとします。Aさんの1時間あたりの生産性は〈80(点)÷160(時間)=0.5〉となり、同様に計算するとBさんは〈0.4〉でAさんよりも低くなり、Aさんのほうが生産性の高い社員ということになります。「この数値を全社員分並べたところ、全体的にテレワークを行っている社員のほうが高くなりました」と石井社長は話します。

現在は、テレワーク関連のさまざまなサービスやツールが販売されているので、それらをうまく活用すれば、同社のようにコストをかけずに、スムーズに社内制度化できそうです。

 

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