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2017年10月6日掲載 山陽新聞「テレワーク」

      2018/10/22

小さな子がいても大丈夫。子育てしながら無理なく働ける

オフィス機器販売・石井事務機センター(岡山市南区福浜町)の石井聖博社長(38)が力を込める。同社は、自宅にいながら仕事をする「テレワーク」を昨春導入。情報システムで職場と結び、データのやりとりやテレビ会議ができるようにした。
社員には「子どもの都合に合わせて仕事ができる」「生活にゆとりができた」と好評。中途採用の応募数は前年の1.8倍に伸びたという。
1歳半の娘がいる元井あゆかさん(29)は出産を機に以前の勤め先を辞め、今年1月に入社した。「テレワークがなければフルタイムの仕事には復帰できなかった」と振り返る。

中小に遅れ

女性活躍、長時間労働の是正…。安倍政権が掲げる「働き方改革」は全国的に広がりつつある。ただ、岡山県の調査(2016~17年)によると、労働時間の短縮に取り組む事業所は、従業員千人以上で85・7%に上るのに対し、50~99人では46・3%にとどまる。大企業に比べ、中小企業の遅れが目立つ。背景にあるのは深刻な人手不足だ。

厳しいですね

9月28日に岡山市内であった運送業5社による会社説明・面接会。求人側の1社、アスカ(同市北区足守)の採用担当として臨んだ前田訓宏さん(39)が苦笑いを浮かべた。
この日集まった求職者は会全体でも14人で、うち8人は60歳以上。前田さんが面接できたのは50代の1人だけだった。従業員20人の同社は、ここ2、3年は慢性的な運転手不足に悩む。過労を防ぐため、時には社長自ら荷物の積み下ろしを手伝ったり、注文を断ったりすることもあるという。
前田さんの兄の吉弘社長(42)は「求人応募が数年前からめっきり減ってしまった」と話す。

人材流出

低金利政策や大規模な財政出動といったアベノミクスの効果で、上場企業の業績は過去最高水準に高まった。大企業が潤えば、地方の中小企業にもその恩恵が滴り落ちてくる―。それが安倍政権が描く「トリクルダウン」のシナリオだ。
だが、地方の中小企業にとって景気回復の実感は弱い。日銀岡山支店の9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、地場企業の業況判断指数は5期(1年3カ月)ぶりに悪化。人手不足が押し下げ要因になっているという。県西部の建設会社役員は「人材が首都圏の大手に流れている。人手を確保できず、これ以上仕事を増やせない」と嘆く。

岡山県経営者協会の野崎泰彦会長は

「低成長の根底には生産年齢人口の減少という構造的な問題があり、その影響は地方ほど大きい。一朝一夕には解決できない」と指摘する。
衆院選は、民進党の分裂を経て戦いの構図が固まった。各党は「生産性革命」「規制緩和」「消費税増税凍結」などの経済政策を掲げるが、本格的な論戦はこれからだ。地方経済を上向かせる確かなシナリオが求められている。
【写真説明】運送業5社の会社説明・面接会。人手不足を反映してか、訪れた求職者は14人にとどまった=9月28日、岡山市

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